Yarn Getting Tangled

美術のこと、読書のこと、編み物のこと、大学院生から引きずっている適応障害で休職している日々のことを綴ります。

「石橋財団コレクション×柴田敏雄×鈴木理策 写真と絵画-セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策」展@アーティゾン美術館

アーティゾン美術館「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×柴田敏雄×鈴木理策
写真と絵画-セザンヌより 柴田敏雄鈴木理策」展を見てきました。

二名の写真家が自身の作品とアーティゾン美術館のコレクション作品とを同じ空間に展示し、写真と絵画の関係性を考える展示です。


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壁紙や作品の配置のされ方などの演出がとても考えられている展示だと感じました。

例えば、モネの睡蓮の連作に着想を得て鈴木氏が撮影した作品群の展示室では、水色の壁面が作品の色彩を鮮やかに見せるとともに、展示室全体に水の表情というテーマを与えるために一役買っているように見受けられました。


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また、二体の円空仏が部屋の中心におかれ、円空仏と共に壁面の写真を目にすることになる構成の展示室も、円空仏の元の木目に逆らわない、整えすぎていない彫りと、自然の中の人工物を写した柴田氏の作品が呼応し合っており、とても印象的でした。


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同じ部屋の入り口側壁面には、レオナルド・ダ・ヴィンチの海綿にたくさんの色を含ませて壁に投げれば、その染みが美しい風景として立ち現れる、という引用が記され、さらにその反対、展示室出口側の壁面に、ダ・ヴィンチの引用に引き付けて、(写真は)その時その場にいないと撮れない、偶然の巡りあわせだという柴田氏のキャプションがあり、両者の対話を間に挟まって聴いているような気持ちになる演出だなと感じました。

 

下記リンクのインタビュー記事にも展示構成の言及が詳しくされており、恥ずかしながら展示を見たときは見過ごしていたものなどがたくさんありました……(セッション5のジャコメッティの展示など)

7/10に会期終了するので駆け込みで行ったのですが、もう少し早く行って2度3度観たい展示だったなと思います。しかも展覧会図録も数日前に完売とのことで手に入れられず、大変無念……

 

柴田敏雄×鈴木理策×光田由里 【座談会】ふたりの写真家と美術館が起こすケミストリー|Tokyo Art Beat

 

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余談ですが、たまたまアーティゾン美術館の隣が工事現場で、展覧会を見終えて下のフロアに行くとガラス張りの壁面からむき出しの鉄骨と仮組の足場、それら灰色の背景と対象をなす朱色のクレーンがよく見え、おおこれは柴田俊雄氏の作品にちょっと通じるんではと思ってスマホのシャッターを切っていたらやはり何人か同じ場所で写真を撮る人が多く、みんなおんなじこと考えたんだろうな……と思うなどしました。こういう緩い連帯感(勝手に感じているだけですが)、結構好きです。


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