Yarn Getting Tangled

美術のこと、読書のこと、編み物のこと、大学院生から引きずっている適応障害で休職している日々のことを綴ります。

10/28 「できないかもしれないこと」を少しだけ「できること」に裏返す

徐々に寒くなる日々ですね。ひたひた迫りくる冬季鬱に怯えつつも、なんとかかんとかやっています。

私は現在、適応障害で休職中です。その経緯はこちら。

shibashiba-713.hatenablog.com

 

 

 

前回軽いパニック発作を起こしたという記事を書きましたが、自宅に戻ってから初めて一人で公共交通機関を使う機会があったので、軽い後日譚というか回復の過程として日記を採録しておきます。

 

10/28

朝、いつも通り配偶者の通勤にくっついて家を出る(そろそろこの行動に名前をつけたい。「通勤リハビリ」がパッと思いつくけど、それだとなんか硬いし……)。


いつもならばそのまま地元の小さい図書館に向かうが、今日は電車に乗り、2駅向こうの大きめの図書館へ向かう。

今までも休職中に少し離れた大学図書館に行ったりしているので行為としては目新しくないのだが、今日の行動には目的がある。約1週間前、旅の途中でパニックを起こしてしまった。旅行中は配偶者も同行していたし、頓服も飲んだので何とか乗り切れたのだが、一人でも公共交通機関に乗れるかどうかは分からない。


一度パニックになっただけで、これまで日常的にできていたこと(一人で電車やバスに乗って移動すること、人込みに行くこと、狭い建物や地下街に行くこと等々)が、オセロのコマがひっくり返るみたいに「できないかもしれないこと」になっていく。
今日図書館へ向かうのは、そのコマをほんの少しだけひっくり返す行為だ。

 

結果的に言うと、一応普通に乗ることができた。
最寄り駅の次がいろいろな路線が交わる駅であることもあって、最初の1駅間は結構人が乗り込んでおり、一瞬ぐらりとするような、「ここでパニックになったらこれだけの人に迷惑をかける」という思いが脳裏をよぎったが、コートのポケットに入れた頓服を握りしめ、スマホに入れたKindleで何でもいいから情報を脳に入れて耐えた。次の駅に着くとどっと人が降りたので少し緊張が緩み、そのまま目的の駅までたどり着いた。
空いている車内ならそんなにおびえず乗れそうだ。

将来的にフルタイムで週5通勤できるかはまた別の問題だけれど、1枚だけでもコマを「できること」側へひっくり返しなおせたならば万々歳。

 

目的地の図書館は大きくて新しく、普段行っている図書館の1.5倍くらいの蔵書がある。
なにより、1Fにカフェが入っているので気軽に昼食を取れそうなところが気に入った。ロッカーもあるし、その気になれば一日作業できそうだ。
昼頃まで書架の間を歩き回り、カフェでベーグルとあんドーナツを食べる。
電車でたった2駅の距離なので、帰りは歩いて帰ることにした。数十分の距離を歩くとさすがに途中で疲れ、通りがかった公園のベンチに座って今日借りた本を読む。

 

読んでいるといきなり見知らぬ人に、「あなたさっきから一生懸命読書されてるから、よかったらこれ」と新興宗教のチラシを見せられる。反射的に本をカバンにしまい、「いやあとんでもない」ととっさに作った笑顔を向けつつ早足で去ろうとすると、「命を大事にね!」という声が追いかけてきた。
いきなり声をかけられた怖さ、そんなに死にたそうに見えたのかという感慨、そんなことより私、なにが「とんでもない」だよちゃんと断れ、という自分への叱咤等がないまぜになりながら、後ろを何度も振り返り、曲がる必要のない角を何度も曲がりながら帰宅する。

 

たまに水底を蹴るように浮上した瞬間があるかと思えば、ささいなできごとでまた深く潜りこんでしまう日々だ。元気な時も大概そうだが、今はとりわけその波が大きい。

 

帰宅後すぐは「さっきこういうことがあって……」と誰かに話して回りたいような心細さを覚えたけれど、しばらくしたらそうした気持ちも過ぎ去って夕食の支度をした。今日のメニューは、数週間前に作り置いておいた野菜のポタージュを冷凍したものを和風だしでのばし、油揚げを入れて味噌汁風に仕立てたものと、豚肉のはちみつケチャップ炒め。適当ながらそこそこ私にとっては美味しく作れている。そのことに毎回なんとなく救われるような気持ちだ。